
基幹システムのブラックボックス化とは?放置するリスクと解消法を解説
「システムを改修したいのに、どこを変更すればよいか分からない」
「既存ベンダーへ確認しなければ何も進められない」
「担当者が退職したら運用できる人がいなくなる」
このような状況は、基幹システムがブラックボックス化しているサインかもしれません。
ブラックボックス化が進行すると、保守や機能追加に時間やコストがかかるほか、障害対応の遅れやベンダー依存、属人化など、事業継続にも影響を及ぼすさまざまなリスクにつながります。
この記事では、基幹システムがブラックボックス化する原因やリスクをはじめ、自社で状況を確認できるチェックポイントや、ブラックボックス化を解消するための具体的な方法まで実務目線で解説します。
基幹システムのブラックボックス化とは
基幹システムのブラックボックス化とは、システム仕様や業務フロー、運用方法などを把握している人が限られ、社内でシステムの全体像を把握できない状態です。
特定の担当者やベンダーしか仕様を理解していない状態になると、改修時や障害発生時に迅速な対応が困難になります。
また、ドキュメントが存在しない、あるいは更新されていないケースも多く、実際の仕様と資料の内容が一致していないケースも少なくありません。
とくに、長年運用されている基幹システムでは、改修や機能追加が繰り返されます。その結果、システム構造が複雑化しブラックボックス化が進行しやすくなります。
基幹システムのブラックボックス化が発生する原因
基幹システムのブラックボックス化は、単一の要因で発生するものではありません。長年の運用によるシステムの複雑化や情報共有の不足、特定の担当者やベンダーへの依存など、複数の要因が重なることで徐々に進行していきます。
ここでは、ブラックボックス化を招きやすい主な原因を解説します。
ドキュメントや仕様が整備されていないため
設計書や仕様書、運用マニュアルなどが整備されていない場合、担当者以外がシステムの内容を把握できなくなります。
また、古い資料のまま更新されていないケースも少なくありません。
ドキュメントや仕様が整備されていない状態は、基幹システムのブラックボックス化を招く原因となります。
ベンダー依存の丸投げ体制になっているため
基幹システムの開発や運用をベンダーに依存している場合も、ブラックボックス化が発生する原因になります。
とくに以下の事柄に当てはまる場合は注意が必要です。
- システムの仕様を社内で把握していない
- 改修方針をベンダー任せにしている
- 障害発生時の対応をベンダーへ依存している
このような状態が続くと、ベンダー変更が困難になるベンダーロックインという問題に発展する可能性があります。
自社がベンダーロックイン状態にあるのか判断したい場合や、対策については下記の記事で解説しているのでご覧ください。
関連記事:ベンダーロックインの原因と対策|依存を防ぐ進め方とは?
特定の人材へ業務が集中しているため
システムの内容を理解している担当者が限られている場合も、属人化が進行しブラックボックス化を招く要因となります。
例えば以下の状態に当てはまる場合、属人化が進行しているかもしれません。
- 障害対応できる担当者が限られている
- システムの仕様を理解している人が限られている
- 引き継ぎが十分に行われていない
- 特定の担当者へ問い合わせが集中している
また、担当者の異動や退職が発生した際、業務が停滞するリスクにも注意が必要です。
業務の属人化が起きる原因やメリット・デメリット、解消方法について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
関連記事:【属人化の解消】システム開発・情シス向け実践的な5ステップを解説
現場主導のツール活用がサイロ化を招いているため
ブラックボックス化の要因の一つとして、現場主導でツールやExcelなどが活用されるケースがあります。
既存システムでは対応しきれない業務や、事業の変化に対応するために、現場の担当者がローコードツールやExcelなどを用いて、独自に業務改善を進めるケースは少なくありません。
しかし全社的なルールやシステム設計を考慮せずにツール等が導入されると、部署ごとにシステムやデータが分断されるサイロ化を招く可能性があります。
このような状態では、作成者以外が仕組みを理解できず、改修や運用、引継ぎが難しくなるでしょう。
その結果、システム全体の構成や業務との関係性を把握しにくくなり、ブラックボックス化が発生する原因となります。
人材不足による共有や育成が進まないため
慢性的な人手不足により、日々の業務に追われドキュメント整備や教育まで手が回らないケースも少なくありません。その場合、知識の共有や後任の育成が進まないため、特定の担当者に依存しやすくなります。
また、システムを理解している人材が育たないことで、長期的にブラックボックス化が深刻化する可能性があるでしょう。
改修や機能追加によりシステムが複雑化しているため
基幹システムを長期間にわたり使用している企業が大半です。運用されるなかで、制度や業務変更にあわせて改修を重ねているケースもあるでしょう。
しかし安易な改修や機能追加を繰り返すと、システム構造が複雑化し全体像を把握しにくくなる可能性があります。
その結果、改修に余計な時間やコストがかかるリスクも高まります。
システムの老朽化が進んでいるため
古い技術や独自の仕様で構築されたシステムは、対応できる人材が限られるケースがあります。
また開発当時の担当者が退職している場合も多く、システム構成や仕様を正確に把握できない状況に陥ることも少なくありません。
とくに、レガシーシステムではブラックボックス化と技術的負債が同時に進行している事例も多いため注意が必要です。
基幹システムのブラックボックス化が招くリスク
基幹システムのブラックボックス化は、単に担当者が困るだけの問題ではありません。下記のように、さまざまな問題を招くリスクがあります。
- 改修や保守の難航
- 障害対応の遅延
- 業務の属人化
現場の生産性を低下させるだけでなく、DX推進や経営判断にも影響を及ぼす可能性があります。
システムの改修や保守が困難になる
ブラックボックス化した基幹システムでは、システム構成や仕様が正確に把握できません。そのため、改修や保守が難しくなる傾向があります。
設計書や仕様書が整備されていなかったり、開発当時の担当者が既に退職したりしている場合、システム改修による影響範囲を的確に推測できません。その結果、小規模な機能追加であっても多くの工数や時間を要する可能性があります。
また既存ベンダーへの依存度が高い場合、改修のたびに見積もりや対応を待つ必要があるでしょう。基幹システムのブラックボックス化は、システム運用の柔軟性が低下する点にも注意が必要です。
セキュリティリスクが高まる
ブラックボックス化したシステムでは、ソフトウェアのバージョンや設定内容を正確に把握できていない場合が散見されます。
その結果、脆弱性への対応やセキュリティアップデートが後回しとなり、不正アクセスや情報漏洩などのリスクが高まる可能性があります。またシステム全体の構成を把握できていないことで、セキュリティ対策の対応漏れが発生するケースも考えられるでしょう。
安全な運用を維持するためには、システム構成や利用しているソフトウェア、設計書などを定期的に棚卸しし、最新の状態を把握しておくことが重要です。
障害発生時に対応が遅れる
システムの構造を理解している担当者が限られる場合、障害発生時に対応が遅れる原因になります。
とくに基幹システムは販売管理や在庫管理、会計など企業活動に直結する業務を担っているシステムです。そのため、障害からの復旧の遅れが業務停止や機会損失につながる恐れがあります。
また担当者の不在やベンダーからの回答待ちにより、初動対応が遅れるケースも少なくありません。障害対応を迅速に行うためにも、基幹システムのブラックボックス化を防ぐ必要があります。
既に障害調査に時間がかかっている、原因の特定に時間がかかり、現場の業務を圧迫しているという場合には、下記の記事をご覧ください。
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関連記事:AIエージェントが障害調査を自動化する「Tracis」の無料提供を開始
業務の属人化により引継ぎができない
ブラックボックス化が進行するとシステムに関する知識が特定の担当者へ集中し、業務の属人化を招きやすくなります。
属人化した状態で担当者の異動や退職が発生すると、システムの改修や運用、障害対応の引継ぎが困難になり業務が停滞する恐れがあります。
ブラックボックス化を防ぐためには、ドキュメント整理やナレッジ共有を進めることが重要です。
DX推進や経営判断の弊害になる
ブラックボックス化した基幹システムは、新しいシステムとの連携やクラウド移行、業務改善などの取り組みを進める際の足かせとなります。
改修箇所が不明だったり影響範囲が推測できなかったりするような状況では、DX施策の実行が遅れ競争力の低下につながる恐れがあります。
またシステム改修に必要な期間やコストを正確に見積もりできないことで、経営判断にも影響を及ぼしかねません。
基幹システムは企業活動を支える重要な資産であるからこそ、ブラックボックス化の放置は危険です。可視化や標準化を進めながら継続的に管理していきましょう。
【チェックリスト】基幹システムのブラックボックス化の度合い
基幹システムのブラックボックス化は、日々の業務が問題なく進んでいる間は気が付きにくいものです。しかし、担当者の退職や障害発生、大規模なシステム改修をきっかけに問題が顕在化するケースが散見されます。
まずは、自社の基幹システムがブラックボックス化しているのかチェックリストで確認してみましょう。
- 社内にシステムの構造を説明できる人がいない
- システム改修や保守は特定のベンダーに任せたままにしている
- ドキュメントが最新の状態になっていない
- 部署ごとにローコードツールやExcelなどで独自の運用が行われている
- 作成者しか仕組みを理解していないツールが存在する
- 改修のたびにトラブルやバグが発生する
- 特定の担当者しか障害対応や運営を行えない
- 判断をベンダーに仰ぐ状態が続いている
- システム刷新による影響範囲が分からず着手できない
該当する項目が多いほど、業務停滞やベンダー依存などのリスクが高まっている可能性があります。放置すると業務停滞や改修コストの増加、DX推進の遅れなど、経営にも影響を及ぼしかねません。
重要なのは一度にシステムを全面的に刷新することではなく、現状を見える可し、優先順位をつけながら段階的に改善を進めることです。次章では、基幹システムのブラックボックス化から脱却する方法を解説します。
基幹システムのブラックボックス化を解消する方法
基幹システムのブラックボックス化を解消するためには、システムの現状を正しく把握したうえで、業務や情報を組織全体で管理できる体制を構築することが重要です。
ここでは、ブラックボックス化を防ぎ、将来の保守・運用やシステム刷新にも対応しやすい体制を構築するための方法を紹介します。
システムを見える化する
基幹システムのブラックボックス化を解消するためには、現状を把握することが重要です。現在稼働しているシステムや管理者、業務と連携している機能などを見える可します。
また、システム構成図やデータの流れ、利用している部署などもあわせて整理しましょう。
現状を正しく把握すれば優先的に改善する箇所も明確になります。
業務の標準化を進める
特定の担当者しか対応できない業務は、ブラックボックス化を加速させる原因となります。
担当者に依存しない体制を構築するためにも、運用ルールや作業手順を見直し、業務フローを標準化することが重要です。
標準化を進めることで担当者による品質のばらつきを抑えられるだけでなく、引き継ぎや教育も行いやすくなります。
ドキュメントの整備と更新を行う
設計書や仕様書、運用手順書などのドキュメントを整備し、常に最新の状態へ保つことも重要です。
ブラックボックス化したシステムでは、実際のシステムとドキュメントの内容が一致していないケースが多々あります。
基幹システムをブラックボックス化させないためにも、改修のたびに設計書や仕様書を更新しましょう。誰でも必要な情報へアクセスできる状態を構築することが重要です。
段階的にシステム刷新を進める
老朽化した基幹システムを一度に刷新しようとすると、多額のコストや業務上の負担が発生します。
そのため影響範囲や優先度を踏まえながら、機能単位や業務単位で段階的に刷新を進めるのが現実的です。
ブラックボックス化が深刻な箇所から改善すれば、リスクを抑えながらシステム全体の運用性や保守性を向上させられます。
定期的な見直しを行う
ブラックボックス化の解消は一度対策して終わりではありません。システム改修や組織変更を繰り返すなかで、新たなブラックボックス化が発生する可能性があります。
そのためシステム構成やドキュメントの更新状況、業務分担などを定期的に見直し、継続的に改善することが重要です。
また、全てをベンダー任せにしない意識を持つことも欠かせません。ベンダーへ運用や保守を委託すること自体は問題ないものの、自社でもシステムの全体像や仕様を把握し、判断できる体制を整えておくことが重要です。
自社で管理する範囲を明確にすれば、基幹システムのブラックボックス化やベンダーロックインを防ぎやすくなります。システム改修や刷新にも対応しやすくなるでしょう。
【事例】製造業の基幹システムを刷新
20年以上にわたり使用されてきた基幹システムの刷新を行った事例です。
精密金属部品加工や各種金属表面処理等を行う製造業のお客様より、システムの見直しに関するご相談をいただきました。
「慣れているシステムの使い勝手を大きく変えたくない」というご要望をもとに、現地調査や周辺環境、業務フローなどの確認を実施。システムをクラウド上に再構築することで、データ消失リスクや攻撃リスク、保守性の低さなどを解消しました。
さらに、製造業に欠かせない作業工程を管理できる工程表を追加開発しています。
基幹システムのブラックボックス化を解消してDXに取り組もう
基幹システムのブラックボックス化は、業務の停滞や属人化の発生、DXの足かせなどを招く原因となります。
事業機会を損失しないためにも、段階的にシステム刷新を進めることが重要です。
株式会社BTMでは、基幹システムの刷新に関するご相談を受け付けております。お客様の業務内容やシステムの使い方、ご要望等をお伺いしたうえで、担当者が最適な提案をさせていただきます。
「大規模な刷新は難しい」
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このようなご相談にも応じておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
